会長挨拶
社会デザインの現在、目的の振り返りと学会の名称変更について
社会デザイン研究を目的に、立教大学大学院に21世紀社会デザイン研究科ができたのが2002年4月。また、私たちの学会が、社会デザインという新しい学問分野を深化、確立し、かつ人材を育成することを目指して設立されたのが2006年6月。
この間に世界中で社会デザインを掲げる活動や運動、団体などが急激に増加し、とりわけ3・11以後の日本においては、たとえば学術会議での研究集会においても「社会デザイン」の必要性が説かれる、それほどにも社会デザインへの関心が高まっています。しかしながら、社会デザインに対するこうした突然の注目には用心してかかる必要があると考えています。危険は2つあります。
ひとつは、トレンド化の危険です。食品でも、おしゃれ洋品でも、あるいは思想でも、経営理念でも、いったん焦点が定まるとあっという間に襲いかかり消費し尽くし、捨てていくのがトレンド消費ですが、日本はそれが顕著な国柄なのです。社会デザインの用語もそうしたトレンド化に乗せられるリスクが高まっています。
もうひとつの危険は、社会デザインという理念の内実に関わる危険です。学会設立の趣旨は、人々がともに生きる歓びを分かち合える社会をどのようにデザインしていくのか、というところにありますが、社会を効率よくシステム化することは、ここで掲げられた方向性とは相いれないものでしょう。社会デザインと社会システムとは対立する理念なのです。地球規模で怒涛のように進行するシステム化の流れにいかに抗するか。そのための方途はいかなるものか。こうした理念のもとに、研究科においても、また学会においても、これまで私たちは、社会デザインが社会システムと混同されることを周到に、徹底的に避けてきたのですが、トレンドに乗せられることによって、そうした周到性、徹底性が内部崩壊するリスクがでてきたということです。 私たち学会は、設立時に「21世紀社会デザイン研究学会」の名称で出発しました。出身母体である立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科との関係を考えれば、ごく自然に出てきた学会名でした。しかしながら、社会デザインの用語が世界的レベルで普及しつつある現状に鑑みるならば、学会名を、理念をより明確に体現する「社会デザイン学会」に改称することが適切ではないかとの結論にいたりました。これまで同様に、会員のみなさまのご支援、ご協力を心からお願いする次第です。
2012年12月
社会デザイン学会会長
北山晴一