設立趣旨
(一)
現在、私たちの社会は従来の制度を支えていた規範や価値観といったものが崩壊しつつあり、その文明論的危機さえも指摘されています。また、社会経済の高度化やグローバル化の進行はその危機的状況を多様化させ、かつ大規模化させており、これにいかに対応するかが世界的な課題となっています。
このような社会的要請を背景にして、立教大学では、2002年4月に21世紀市民社会のグランドデザインを描き、かつ実践的に担いうる人材を育成する場として、21世紀社会デザイン研究科を設置しました。そして、その研究教育活動の中で率先して追求すべきものとは、単なる社会運営上のスキルではなく、人権意識に裏付けられた真に共生的な社会を創成するために必要な理念と知識の明確化であり、また、そうした理念と知識の習得でなければならないと考えました。
(二)
21世紀市民社会のデザインを描くにあたって、早急に考えなければならない課題とは、いったい何でしょうか。21世紀社会デザイン研究科では、これまで多くの人々が重要であると感じながらも具体的に検討し研究する対象として扱われることの少なかった「非営利活動・非営利組織」にかかわる問題群、および「文明社会の危機管理」にかかわる問題群を選択し、また、方法論上の視点として「組織ネットワーク」の重視という立場を設定しました。非営利組織や危機管理研究の分野では、膨大な経験知や暗黙知が蓄積されている一方で、その必要性が指摘されながらも知の体系化が大幅に遅れている現状があります。結果として、残念ながら、政策の立案や制度の設立といった面で十分に対応できない状況となっています。これらの分野の研究は、アカデミズムの世界でいまようやくスタートしたばかりのところです。今後、これらの分野での知を体系化し、社会の数多くの方々の協力を得ながら共有されかつ政策化された知の体系へと発展させる必要があると思います。
(三)
21世紀の市民社会のグランドデザインを描くことは、ことばでいうほど容易ではありません。さまざまに異なる、ときには対立するかもしれない多様な考えや立場を、いかに市民社会創成の酵母としていくか、そのための議論は大学の枠を超えて広く社会の各界、各層、各分野の人々との忌憚のない意見交換の場が必要であり、持続的な研究の場が必要であると考えます。そのためには、学界のみならず社会の数多くの方々の参加を得るとともに海外の研究機関や大学との連携も視野に入れた社会デザイン学会の設立が必要不可欠であると考えました。学会活動を通じて多様な知が統合され、多くの研究者や実務家も参加し、社会デザインという新しい学問分野において、世界に開かれた幅広い知のネットワークが形成できたらと思います。皆様のご参加を期待いたします。